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装から大砲まで備えた完全なものを作るようになった。これは船舳の建造用から海軍などの上層部への承認用または献呈用までいろいろな目的に応じた模型が作られるようになったものといえる。建造用の模型としては、片舷の外板を張らないで、中の構造をみせた模型によって、船大工の親方は建造の段取りを計画した。ガンデッキから上が外せる模型によって、新しい構造の検討がなされた。グリニッジの国立海事博物館にある“ベローナ”の模型はフレームの構造がよくわかり、従来より剛性の高い外板の様式の研究に用いられた。一般的な模型としては外板は張るが甲板は張らないでビーム、カーリング、二ーなどがみえるようにつくられた。グリニッジの国立海事博物館にある“サンダラー”の模型などがその例である。ロンドン科学博物館には18世紀の74門砲艦のフレームの取り付けがほぼ完了した状態の建造中の一工程を示す模型が展示されている。またグリニッジの国立海事博物館にある“ビクトリー”の模型にはスリップの周りの丸太柱の配置と足場板とその支柱が示されている。ハンプシャーのバックラーズハード造船所は海軍の大型艦を建造していたが、模型の制作が得意だった。造船所には設計図から模型を制作する専門の工場もつくられていた。ロンドン科学博物館にはサザークにあった模型制住所の広告が残されている。
海中公式模型はグリニッジの国立海事博物館に展示されていて、200年以上たった今でも柘材で作られたその見事な出来栄えに接することができる。イギリス海軍は18世紀末のフランスとの戦争で公式模型の制作をやめ、ハーフモデルの製作に切り替えてしまった。
近年、帆船模型制住を趣味としている人の多くは、“サンタマリア”や“バーサ”から“ビクトリー”や“カティ・サーク”に至る中世、近世の帆船を制作の対象としている。これは、その時代の帆船の美しさと同時に、設計図や模型が多く残されていて、資料が豊富なこともその一因であろう。模型船についてみても、“サンタマリア”は船の科学館、ロンドン科学博物館でみることができるし、“カティ・サーク”は実物もグリニッジに保存されているが、船の科学館、ロンドン科学博物館、ロスアンジェルス海事博物館、香港博物館でみることができる。1759年に起工し、1765年に進水した“ビクトリー”は1805年のトラファルガー海戦に大勝してイギリス海軍の歴史的

 

 

 

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